実は私たちの食卓に届く97%が養殖と言われているわかめですが、どのように育てられているのでしょうか?何か網のようなものを使っているイメージだけど詳しくは知らないという方が多いと思います。
今回はそんなわかめの養殖について、まとめてみました。
わかめの養殖方法
まずはわかめの養殖方法について、養殖時期と工程に分けてご紹介していきます。
採苗 7月下旬~8月上旬
採苗とは、わかめのめかぶを用いて人工的に遊走子(無性生殖をする胞子の一種)を採苗器に付着させる作業のことで、一般に水温が17°Cを越える7月下旬~8月上旬に行います。
私はてっきり最初から網にくっつけていくものだと思っていたので、お米を育てる際に使う苗のようなものを作るとは思いませんでした。
保苗 8月~9月
採苗したわかめ採苗器を海中に置き、幼葉をそろえて育成させる期間をさしています。
7月~8月に採苗したわかめの配偶体(肉眼では確認できないほど微小な大きさのままで休眠している状態のこと)は9月に入ると水温の下降にともない成熟を初め、
水温20°C以下になるころから芽胞体(受精したものが発芽した状態)となり始めます。芽胞体が成長し肉眼で見える程度の大きさになったものをわかめの芽と呼んでいます。
こうしてみると学校の理科を思い出しますね。
私は理科が苦手でしたが、普段私たちが地上で見る植物とは育つ環境が違うため、
どのように育成されていくのか非常に興味があります。
本養成(巻き込み) 10月~11月
採苗器にわかめの幼葉の大きさが1~2cm程度に揃った頃に、沖合施設に巻き込み、本養成用の綱(養殖綱)に巻き付けます。
ここではじめて私たちが知る、わかめが巻き付いているあみあみが出てくるんですね。
網を置いておいたら勝手にできるものだと思っていた私が恥ずかしいです・・・
養成管理(間引き) 12月~1月
高品質で均一なわかめを作るためには、適正な水位と密度で養殖しなければなりません。
海などは潮の満ち引きもあると思いますので、浅瀬で水位を維持するのは難しそうですね。
いつもわかめを養殖していただいている方たちの努力に感謝です。
適正水位
わかめ養殖の適正水位は、通常3mよりも浅くあることが望ましいとされています。適正水位よりも深く養殖すると、品質の劣化や育成不良の原因となります。
間引き
適正な養殖密度は養殖網1m当たりのわかめの本数が140本程度で、この適正な養殖密度にするには、1月頃に間引きを行うことが必要です。
収穫 3月〜4月
そしてわかめは3月に入ると急激に成長し、4月には全長が3mを超えるものも出てきます。刈り取ったわかめは出来るだけ早くボイル加工を行います。
ボイル加工というのはいわゆる湯煎で、熱湯による加熱処理になります。
その後水切りし、塩漬けされ、さらに芯抜き(中心の芯を抜いて葉脈だけにする)や先枯れなどの劣化部分を除去したり、脱水、等級分けなどの選別をした上で製品となります。
芯抜きなどはすべて手作業で行うため、収穫したわかめの膨大さを考えると、気がめいってしまいそうです。
育てる場所によって何が変わる?
わかめなどの海藻は、自然のあるがままに育つというイメージがありますが、養殖する場合は種となる胞子を種苗し成長させ、どのような環境で育てるかで味や食感が左右されます。
海の水位、潮の流れなどで、茎の長さや、肉厚、切れ込みの大きさ等も変わるため、それを想定して植え付けや、栄養が均一にいきわたるように、密度を考えて間引きするなどして農作物と同様に育てています。
とはいえ、人の力ですべてコントロールできるわけではないため、風の流れや潮の流れなどの、その年の気候により出来が左右されるそうです。近年は海の栄養が減ってきて、色の薄いものもできるなど、影響が出ています。
しかし学校の社会などで、工業廃水や生活排水により海の富栄養化が深刻になっていると習った人も多いのではないでしょうか?
私もその一人で、なぜ富栄養化とは対照的に海の栄養が減ってしまっているのかが気になったので調べてみました。
実はこの貧栄養化、富栄養化対策を行ったことにより発生したもので、
簡単に言えば、対策しすぎたことで極端に海に流れる栄養素が減ってしまったのです。
やはり自然環境のコントロールは難しいようで、一部地域では下水処理基準の緩和などを行い対策を進めるなどが検討されています。
まとめ
さて、今回はわかめの養殖方法について主に紹介していきました。
時期ごとの育成工程だけでなく、育てる環境による変化や少しですが海の貧栄養化についても触れていきました。
私自身わかめの養殖についてはほとんど知識がなかったので、私たちのもとに届くわかめに対する考え方が大きく変わる機会となりました。
また、富栄養化を知っている方は多いと思いますが、貧栄養化については初耳の方も多いと思います。
かくいう私もこの記事を書いていなければ出会うことがなかった現象だったので、記事を通して知見を得れたことをうれしく感じています。
今回の記事はこんなところです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
それでは皆さん、また次回お会いしましょう。
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